手に入らないはずだった、幻の成分 ― クロセチンのはなし
Rose Nocturne(ローズノクターン)の配合を決めるなかで、一度は諦めかけた成分があります。
「クロセチン」という、黄金色をした天然の色素成分です。
惹かれたのは、色ではなく
クロセチンは、梔子(くちなし)の実やサフランに含まれる天然のカロテノイド色素です。梔子は、日本でも古くから食品の色づけに使われてきた植物で、栗きんとんやたくあんのあの鮮やかな黄色も、多くの場合この実から抽出された色素によるものです。
けれど、私たちがこの成分に惹かれたのは、色そのものではありませんでした。休息にまつわる働きについて関心が寄せられている成分だと知ったことが、配合を考えるきっかけでした。
夜のための一粒に込めるなら、この成分にふさわしい理由があると感じたのです。
流通が止まっていた
けれど、配合を検討していたちょうどその時期、クロセチンの原料は世界的に流通が滞っていました。
天候や収穫量に左右されやすい天然由来の原料です。需要と供給のバランスが崩れれば、あっという間に手に入らなくなります。製造メーカーに相談しても、返ってくる答えは「今は難しい」の一点張りでした。
配合リストから、一度は外すことも検討しました。理想の組み合わせを追い求めるあまり、商品が完成しないのでは本末転倒だからです。
それでも、諦めきれなかった理由
それでも、私たちはクロセチンを諦めきれませんでした。
夜の静けさのなかで、翌朝の自分に向けて何かを届けたい。そう考えたとき、休息にまつわる働きに関心が寄せられているこの成分は、Rose Nocturneに欠かせないピースだと感じていたからです。
試作を重ね、他の成分との配合バランスを調整しながら、原料メーカーとのやりとりを辛抱強く続けました。すぐに答えが出ないことは分かっていましたが、時間をかけてでも実現したいことでした。
思いがけない入手
そうして試作を続けていたある日、製造メーカーから連絡が入りました。
「少量ですが、確保できました」
流通が完全に止まっていたわけではなく、ごくわずかながら入手できる経路が見つかったのです。諦めかけていた矢先の知らせに、正直なところ何度も確認してしまいました。
こうして、クロセチンはRose Nocturneの7つの成分のひとつとして、無事に配合されることになりました。
おわりに
一粒のなかには、こうした偶然と粘り強さの積み重ねが詰まっています。
配合表に並ぶ成分名だけを見れば、それはただのリストかもしれません。けれど、その一つひとつにたどり着くまでの道のりを知っていただけたら、いつもの夜が少しだけ違って見えるのではないかと思っています。
原料選びの背景については、青いバラは、自然には咲かない ― Rose Nocturneの原料のはなしでもご紹介しています。あわせてご覧いただけたら嬉しく思います。